芥川賞を受賞した小説が原作!ドラマ「火花」若手お笑い芸人の夢と現実を描いた感動物語

芥川賞を受賞した小説が原作!ドラマ「火花」若手お笑い芸人の夢と現実を描いた感動物語

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「純文学」と聞くと、どのようなイメージがありますか?

とっつきにくいイメージだけれど、興味があるという方も多いのでは。
純文学とは娯楽性よりも、文章力や表現力などの芸術性を重視する小説のこと。

Netflixオリジナルドラマ「火花」は、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんによる同名小説が原作です。
小説は芥川賞を受賞。発行部数累計250万部を超える大ヒット作品で、映画化もされました。

原作小説では、風景や心情を表す言葉が美しく連ねられています。
そんな純文学と、胸を熱くするお笑いの世界を覗いてみませんか?

青年たちの10年間を映し描く・あらすじ

青年たちの10年間を映し描く・あらすじ

ある夏の日、売れない芸人の徳永(林遣都)は、熱海の花火大会で漫才を披露。
しかし祭りの進行はグダグダ。花火の打ち上げも始まり、誰も聞いていないような状態でした。
ステージ進行の悪さと、運営のずさんさに憤怒した先輩芸人の神谷(波岡一喜)は、奇抜な漫才により会場を騒然とさせます。
会場の雰囲気などお構いなしに、自分を貫く神谷。徳永が衝撃を受けるには充分でした。

強烈だけれど心根は優しく、思いやりのある神谷。
彼の人柄に強く惹かれ、徳永は神谷に弟子入りを申し出ます。

神谷は自分の伝記を書くことを条件に、徳永を弟子として受け入れました。
親しくなればなるほどわかる、神谷の人柄。
神谷は天才肌で破天荒。人間味に富んだ人物でした。
2人は頻繁に酒を酌み交わし、キラキラと輝く時間を共有していきます。

少しずつ売れ、単独ライブが出来るまでの人気となった徳永。
なかなか売れず、生活も神経もすり減らしていくような神谷。
2人の距離はゆっくりと離れていくのでした……。

夢を追い続けることの大変さや、芸人のリアルが赤裸々に描かれています。
月日は流れ、徳永は成功と挫折を経験。
いつの間にかすれ違ってしまった神谷とは、連絡を取らなくなっていました。

ある日、神谷が借金を抱えたまま姿を消してしまったと、徳永に連絡が入ります。
1年後、2人は再会するのですが、まさか神谷があんなことになっているなんて……!?
果たして、徳永と神谷は夢を追い、叶えることが出来るのでしょうか?

お笑いの成功と挫折

お笑いの成功と挫折

ストーリーが進むにつれ、徳永のコンビ「スパーク」は努力が実り、売れっ子になっていきます。
一方で、師として仰いだ憧れの神谷は伸び悩み、次第に自分を見失っていくのでした。
徳永がイメージチェンジをして、銀髪になってから人気は更にうなぎ上りに。
そんなある日、神谷と会うことになった徳永が、神谷の姿を見た瞬間に絶句します。

神谷は、徳永の銀髪を真似していました。

憧れの人が、自分を真似するようになってしまったというショックと悲しみ。
そんな神谷の変わってしまった姿に徳永は、悲しみと怒りをぶつけます。
そして神谷自身も自分の弱さを認め、お互いに涙するシーンはまさに青春!

芸能界に限らずですが、輝かしい成功の舞台裏には、泥臭いものがある。
苦労も努力も葛藤も、見せたくない大人達の胸中を、まざまざと見せてくれるドラマです。

漫才を使った演出の素晴らしさ!

全10話の中でも、物語の佳境に入った9話は特に必見。
神谷の漫才のオマージュを混ぜて、徳永が気持ちを吐露するシーンは涙なしには観られません。
漫才ですが想いの熱量でもあり、笑いながら泣いてしまうという素晴らしいシーンです。

10話のラストまで観てからもう一度1話に戻ると、天才的で破天荒に見えた神谷の性格も、見え方が変わるでしょう。
神谷という人物の、どこまでも繊細で優しく、自分を曲げないピュアさに心打たれます。
一度だけでなく、何度も見直したくなるシーンがたくさん!

漫才が作中で洗練されていく!

漫才が作中で洗練されていく!

主演は俳優の林遣都さん、波岡一喜さん。それぞれの相方には、プロの芸人の井下好井さん、とろサーモン村田さん。

林遣都さんと波岡一喜さんは、それぞれ俳優とは思えない漫才の掛け合い!
もちろん、プロの芸人である相方の力添えもあるのかもしれませんが、序盤の"笑いがとれない漫才"から、人気芸人の"面白い漫才"へ変わっていく様に息を飲みます。
まず、序盤で"下手に演じる"という俳優さんと芸人さんの演技力に圧倒。

どんなことでも、上手くできることを下手にみせるというのは難しいものです。
作中で成長する漫才を楽しめるので、ドラマだということを忘れてお笑いに没頭してしまうことでしょう。

漫才ネタは途切れずに全て見られるので、純粋にお笑いを楽しめます。
切れ味の良いネタに笑いながらストーリーも楽しめるという、2度おいしい作品ですよ。

臨場感溢れるカメラワーク

臨場感溢れるカメラワーク

人物に合わせてカメラが動き回っているのが本作の特徴。
カメラの手振れがあることで、自分もそこにいて行動を共にしているような臨場感。
ドキュメンタリーっぽさを感じさせるカメラワークで、登場人物が近くにいるよう。

小説で表現されている事柄や風景も、とても上手く表現されています。
原作小説で描かれている冒頭部分。
祭りのお囃子が激しく”マイクを中心に半径1メートルくらいしか声が届かない”。
この場面は、漫才の舞台から少し離れた場所で撮影することで、主人公たちが行う漫才の声は遠く、こちらまで聞こえてきません。
この表現により、花火大会の運営がずさんであることが伝わりやすくなっています。

原作を知っている人は、映像化されたこの世界に、より感動できるのではないでしょうか。

リアルな東京を映し出すロケ地

主人公である徳永を演じる林遣都さんと、神谷を演じる波岡一喜さんのインタビュー記事でも紹介されていた"リアルな東京"がとても印象的。

渋谷、池尻、三宿、下北沢、246号線沿い、高円寺、吉祥寺、上石神井の家までの道のり、高田馬場、六本木……。
スタジオや背景合成ではなく、実際に吉祥寺の通りで一般の歩行者を止めて行うなど、撮影は大変だったそうです。
その製作陣の苦労もあり、臨場感溢れるシーンが多く感動します。
近所や地元、旅行先など、知っている街が出てくると、ぐっとリアリティが増しますよね。
登場人物たちがここで生きているという、キャラクターの息遣いが感じられそうなのもリアルなロケならでは。

自伝のようであって自伝ではない

作者又吉さんのインタビュー動画では、いくつか作品の要素が語られていました。
書き上げるまでの時間は3か月程。小説にはこれまで蓄えてきた芸人の世界を描いたのだとか。

登場人物に特定のモデルは存在せず、誰か一人ではなく、いろいろな先輩、同期の芸人を見てきたことがヒントになっています。
主人公の徳永に関しては、大きくわけたら又吉さん本人に似ていても、自分とは違う目線を持っている芸人にしたそうです。

自分の経験だけでなく、見てきたものや関わってきた人からキャラクターが生まれると思うと、とても感慨深いですね。

自分を表現するとは何かを問う

自分を表現するとは何かを問う

作中では街中や公園などで、様々なクリエイターが自己を表現しているシーンが描かれています。
自分の表現したいものを表現する楽しさと難しさ。
徳永は深夜、路上で歌うミュージシャンにチップを渡しますが、なんだか訳あり……?

趣味で表現を楽しむこととは別に、プロとして、仕事を行う難しさや厳しさも映し出しています。
決して、自己満足だけでは報われない厳しい世界。
徳永の心が揺れ動き成長していく姿に、感情移入してしまいます。

まとめ

タイトルの「火花」。作中に花火が登場するので、それにちなんだものかとおもいきや……。

熱い想いがぶつかり合い、はじけ飛ぶ。徳永の組むコンビ名も「スパーク」という一瞬の輝きと勢いを感じさせるものです。
輝いては消える炎が一瞬ではなく、繰り返し続いていく。
作中では度々ネガティブワードも飛び交いますが、それらは登場人物たちの葛藤や、現代人の心の叫びなのかもしれません。

下積み、成功、苦難など芸人のリアルが、たくさん詰め込まれている本作。
お笑い好きな人も、そうでない人も、新しい世界への扉が開かれること間違いなしです。

Netflixシリーズ「火花」独占配信中

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